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「父ちゃん……母さん……」
顔を両手で抑えてしゃくりあげるタク。
その涙は夜までずっと流れ続けていた。
だが夜になり、月の光がでる頃、タクの目にある物が映った。
それを見た瞬間、タクの涙はピタリと止まった。
家の僅かな隙間から漏れる月の光が、ちょうど床に落ちた金剛石を照らしていた。
タクは手を伸ばし、それを手に取る。
月に照らされて七色の輝きを出す金剛石。
吸い込まれる美しさ。
タクの脳裏には、触るなという妖怪の声が確かにあった。
だがタクに恐怖はなかった。
その石を手に持ったまま、タクは音も立てず、草履も履かずに家を出て行った。
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