序章

2/2
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
 緑が映え、薄雲を纏って聳える山々。その山の奥に、小さな集落があった。山には桑の実が成る梅雨明けの季節。  雨上がりの山に、一人の男が居た。 「ん?」  山腹で、薪を背負った麻の野良着の年半ば程の男が、道に光る何かを見つけた。  雨水でも貯まっているのだろうか? それにしては光が強い。  そう思いながら男は被った笠を持ち上げ、山道へと目を凝らす。  すると、そこには光り輝く小石が転がっていた。  男はそれを手に取り、木々を通す陽に掲げる。  その石は山で見る湧き水のように透き通っており、陽に晒すと内部が万華鏡のような多彩な色で輝いていた。 「こいつぁすげぇ!」  男は意気揚々と、跳ねるように山道を降りて行った。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!