憑く光

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 タクは、水銀から逃げるように瞑った目を開いた。  すると、目の前には果てしの無い闇が広がっていた。  空も、そして地面もその先も、ずっと一色の漆黒に塗りつぶされていた。  体に重みはなく、前後左右すら曖昧な世界。  だが、タクは間違いなく、その場に立っていた。  ふと、後ろで何かが蠢く気配をタクは感じた。  振り返ると、そこには少し丸みを帯びた白い壁があった。  否、それはただの壁ではなく、よく見ると薄い金剛石のような物が鱗状に重ねて張り巡らされていた。  そのまま、タクは顔を上げて行く。  白い丸みを帯びた壁は、何段にも積み重ねらされていた。  そのまま顔を持ち上げて行くと、ずっと高い所から蜥蜴のようなものの首がこちらを見下ろしていた。  タクはその時理解した。  目の前に居るのは巨大な大蛇なのだと。  白い大蛇は、その赤い目をタクに向け続けていた。  タクも、目を反らさず大蛇を見つめて返していた。  すると、大蛇は蜷局を解き、その巨体を闇の中に伸ばした。  一里はあろうその巨体は、一瞬で闇の奥へと消えてしまった。  暗闇に一人残されたタクは急に強い眠気に襲われ、そのまま抗う事なく目を瞑り、闇へと落ちて行った。
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