憑く光

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 体に重みを取り戻し、タクは目を開く。  目の前には、妖怪の狐の面があり、その目は真っ直ぐにタクを見ていた。 「怒ってるのか?」  タクは、鉞を振り下ろす直後、妖怪がそれを止めに入ろうとしていたのを視界の隅で捕らえていた。  しかし、妖怪は首を振ってから何も言わずに立ち上がり、辺りを見渡していた。  タクも上体を上げて周りを見る。  柵越に見た村は、あのキスケに纏わりついていた水晶に覆い尽くされていた。  家も、畑も、野に出た人々も全て水晶に変わり、時間が停止していた。  タクは思わず言葉を失ってしまう。 「これがお前のやった過ちだ」  妖怪の言葉が、タクの胸に重くのしかかる。 「俺の過ち……」  一度に飲み込めないその言葉を反芻して、タクは胸に納めた。  タクは視線を自分の両手に戻した。 「俺……妖怪になったんだな」  姿形は変わらずとも、タクはそれを理解していた。  あの白い蛇は、アヤカシなのだろう。  そして、今目の前に居る妖怪と同じく、この場に残ってしまった自分は、既に人理から外れていることを示していた。  タクの胸の内には、何の感情も出て来なかった。  ただ刻々と変化する状況に、流されていた。
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