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「おうタク!見ろよ!」
薪割りをしていたタクに、突然やって来た父、キスケが声を上げなにかを掲げていた。
高らかに上げられたそれは、七色に輝いていたが、タクにはそれがなんなのか分からなかった。
「父ちゃん、なんだそりゃ?」
「馬鹿!見て分からんか?金剛石だよ金剛石!」
「金剛石?」
タクは薪割りの鉞を軽く振り下ろし、薪割り台に突き刺してからキスケの方へと小走りで向かった。
「ほうら見てみろ」
タクは降ろされたキスケの手の中を見てみた。
キスケの手の平には、透き通った小石があった。
石は七色の輝きを放ち、石の中心では色がひとりで幾多に変わり、無限の色彩を放っていた。
「すげぇ……」
思わずタクは呟いた。
「すげぇよ!」
声を上げ、次第にタクの胸の奥から興奮に似た何かが湧き上がってきた。
「父ちゃん、きっと高く売れるよ!」
「馬鹿、ロマンのねぇ奴だな!こいつは家宝にすんだよ」
キスケは金剛石を陽に掲げた。
キスケは笑みを浮かべていた。
「……父ちゃん?」
しかしタクには、その笑みが少し不気味なものに見えた。
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