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妖怪が見えなくなった頃、タクは山に出た。
少し前に雨が降ったが、森の小枝は問題なく乾いていた。
少し太い枝はまだ芯が生だが、家に持ち帰ればいくらでも乾く。
そう思いながらタクは鉈を手に、木を細かくしては背負った籠に入れていった。
そして朝から始めた薪拾いは、昼に差し掛かる頃には籠一杯になっていた。
こんだけあれば五日は持つだろ。そう思いながらタクは重くなった籠を背負い直す。
そのまま、お天道様が機嫌を損ねる前に家に戻ろうとした。
山の気候はすぐ変わる。
先程まで晴れていたと思えば、一刻も過ぎない内に俄雨が来るなんて事がしょっちゅうだ。
だが、タクはふと足を止めた。
立ち止まったまま、しばらく沈黙する。
そしてその場で踵を返した。
タクは、そのまま家路とは異なる山道を歩いた。
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