憑く光

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 タクは膝を強く抱き、顔を伏せた。  思わず涙が滲む。  やるせない気持ちが、行き場のない気持ちが溢れ出しそうになる。 「母さん……」  情けなくも、そう口に出してしまった。  その時わっと強い風が吹きつけた。  木々が揺れ、青い葉が散る。  ハッと顔を上げタクは振り返った。  そこには先程見た妖怪がいた。  狐の面のその奥の二つの光は、真っ直ぐにタクを見下ろしていた。  ここには誰も居ない。  襲われれば、助けを呼べない。  間違いなく喰われる。  タクは籠に差し込んでいた鉈に手をかけた。  鉈に巻いた布を取っ払い、狐の妖怪へと向ける。  妖怪は怯む様子を見せない。  その度量に、逆にタクが物怖じしてしまう。  しばらく二人は睨み合っていた。 しかし…… 「?」  妖怪は、踵を返して再び歩き始めた。 「おい!」  声を上げるが、妖怪はそのまま森の奥へと消えて行った。  と、その時、タクの頭に何かが落ちた。 「?」 タクは顔を上げる。  すると次には、見上げた顔の頬に、冷たいものが落ちる。  空が、黒い雲に覆われていた。 「まずい!!」  タクは籠を背負い、慌てて走り出した。
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