息子の言葉が私の頭に呼びかけた記憶のこと

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 私は腰痛持ちだ。膝も痛い。  左膝に至っては、冬の冷え込みが激しかった明け方など、曲げることすら容易でない。  年をとったのだ、、と膝のきしみが教えてくれる。  それでも若い頃はあった。自分がなにものか分からず迷う日々があった。  私がK大学の二年生だったころ。  もう、8年も経ったのか。  私は一般教養として「宇宙科学」という授業を履行していた。  文学専攻の私にとって、  というよりもただ無為に日々を過ごしていた私にとって、その授業は単位の数あわせ。  進級のためだ。選んだ理由もない。  積極的に出席するわけでもない。  試験の時は教科書を持ち込んでも良いと言うことだったので、ばんしょうするわけでもない。  ただただ、席に座って90分教授の声を聴いていた。  しかし、ある日の授業。  空が晴れていた。  暖房器具のない教室はやたらと寒く、鼻水がさらさらしてきて弱った。  その日の授業の内容が「宇宙の構成物質」であったのだ。    その内容が、いや、その内容が訴えてくる何かに、私は衝撃を受けたのだった。  教授は寝癖を直さない。名前は忘れた。  灰色のくすんだジャケットをいつでも着て
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