息子の言葉が私の頭に呼びかけた記憶のこと

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いたのを覚えている。  マイクをもって、聞き取りにくいもそもそした声をつまらせながら、黒板に向かって授業をしていた。  私は、最初教授の寝癖をぼうっとみていた。    ふと目にとまったのが、黒板の90という数字だった。  教授は授業を進める。  - つまり、宇宙を構成する物質は大別してみっつ。       一つが、塵芥        一つは、ガス    そして、この暗黒物質だね。     この物質は光を通さない。  質量が分からない。    測定できない。    現状では、これがなんなのか分からないのだ。  私は、その時まで授業というものについて、その分野に突出した教授が生徒に対し、既知の情報を与えるものだという認識しかなかった。    だから、その「わからないのだ」に引き込まれるような魅惑を覚えた。  - この暗黒物質は通称ダークマターと呼ばれる。      そして、何より大事なのは、この物質が宇宙の90パーセント以上をしめているということだね。  - つまりは、宇宙の90パーセント以上が、私たちにとって無 明の闇であるということだ。     その日、私はその授業のノートを初めてとった。  そればかりでない。    授業を終え帰ろうとする教授を、教室に引き留め話しかけたのだ。     内気な私が。
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