寝癖を直さない教授との対話のこと

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 授業が、終われば生徒は早々に帰ってしまう。    新入生の頃は、高校中学と違う、学校と生徒のつながりの希薄さに、寂しさと心細さを感じたものだ。    その希薄な関係というものを享受し乗りこなすのが大人になるということだと知ったのは、社会人になってからだが、、。    九州の片田舎から上京した私にとって、「都会」という言葉はいつも「郷愁」より強い寂寥感を感じさせられる。                   人がいなくなると、教室は一層冷え込んだようだった。    窓ガラスから差し込む日差しが急激に遠のくのを背中で感じていた。 「すいません質問が。。」  授業を終えた教授を、たった一人の生徒の質問のために引き留めるのが、無礼なことのように思えた。  そのことからも、いかに自分が不真面目でありふれた大学生だったのかが分かる。  しかし、その時の私は好奇心を抑えきれず、またある種の使命感を感じていた。  身なりの余りよいとはいえない教授は、気さくな方だった。  微笑が嬉しかった。 「おほ、2年半ぶりの質問だ。なんでしょうか?」  教授の微笑みが、私の使命感を満たすようだった。  が、いざ問いかけよう
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