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「ありがとう! お兄ちゃん」
少女といろいろ話をしていると、時間が過ぎ、俺は帰る事にした。
「ジュースくらい、いつでも買ってあげるよ」
俺は少女に微笑みかけて、帰ろうとした。
「うぅん、そうじゃなくて」
「ん?」
「たすけてくれて、ありがとう! っていう、いみだよ」
辛い。苦しい。痛い。
この子と一緒にいる限り、翼を思い出すだろう。
『バイバイ』
耳元に、頬に翼の体温が蘇る。
「いいよ、もうお礼なんて」
「うん、じゃあまたね!
バイバイ」
「………うん、じゃぁね」
結局少女は、俺が見えなくなるまで、病室の窓からブンブンと手を振っていた。
手で頬に触れる。
『ねぇ………聴いて』
『ありがとう! お兄ちゃん』
《バイバイ》
二人の声が重なる。
俺はただ、あの子の笑顔を守りたかった。
そのためなら、自分がどうなっても構わなかった。
それは間違っているかもしれない。きっと悲しむ人もいるだろう。
それでも、守りたいんだ。
彼女達を……………………
俺は頬のあたたかさにそう誓った。
終わりが始まりを呼ぶ。
始まりが終わりを呼ぶ。
これはそんな物語の始まり。
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