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「危ないっ」
車の急ブレーキ。
人々のざわめき。
人々の悲鳴。
そんな音、なに一つ俺には聞こえなかった。
「翼? つ…ばさ?」
翼に突き飛ばされた少女は、気を失っていた。
「あの…子は?」
「人の心配してる場合かっ」
それでも、翼は、
「……あの子………は?」
自分を顧みなかった。
「ッ! ………無事だ! 気を失っているだけだ! だから」
「そっかぁ………よかった」
「早く! 病院に!」
「ねぇ………聴いて」
翼は上体を起こし、俺の頬に手を当てて、耳元で一言だけ呟いた。
「バイバイ」
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