バカップル

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バカップル

俺は朝から悩んでいた。 もしこの能力が本物なら今夜井呂毛さんが夜這いに来るからだ。 初体験は好きなコとって決めていたけど、初めて同士だと上手くいかないって親友の直樹も言ってたし、歌織がいつその気になってくれるかも分からない。 何より井呂毛さんは綺麗でナース服の上からでも分かるほど完璧なボディで、いつ見てもドキドキしてしまう。 推定27歳の彼女はきっと経験豊富で、初めての俺には申し分ないだろう。 歌織がいる手前、悩んでいると言いながらもう結論は出ていた。 今夜、脱チェリーだ‼ ガチャ‼ 「イワン‼おはよう‼」 歌織だ‼ 「あれ⁉が、学校はどうしたんだよ⁉」 かなり焦っていた。 「今から行くよ。朝礼は遅刻だけど。」 「いいのかよ。」 「うん。ほんのちょっとしかいられないけど放課後は部活があるから来れないし。」 歌織は一年生ながら新体操部の期待の星で、次の県大会の出場も決まっていた。 「そうか、悪いな。」 「ううん、謝らなきゃいけないのは私だよ。 こんな目にあったのも私が泊まりに行くとか言ったからだし。」 歌織は俺の耳元に顔を近づけて小声で囁いた。 「ホントはあの日もまだ決心出来てなかったの。 でもね、初めての相手はイワンって決めてるからもうちょっと待っててね。」 歌織は顔を真っ赤にして病室のドアの前まで行って振り返った。 「じゃあね‼看護婦さんに見とれちゃ駄目だよ‼」 「おう‼」 バタン‼ 歌織は出ていった。 漫画でこんな会話をしているラブコメがあったらアホか‼ってツッコみたくなるだろうが、実際に付き合うとバカップルでもいいやって気になる。 しかし俺はホントの馬鹿だ‼ 歌織よりも欲望を優先させていたなんて。 「若いっていいねぇ。」 小池さんが話しかけてきた。 俺は決心した‼
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