昏睡

1/2
前へ
/192ページ
次へ

昏睡

・ ・ ・ ・ ……ここは何処だろう⁉ 目が覚めるとだだっ広いロビーのソファに寝ていた。 「「8月23日にお亡くなりになられたお客様、至急3から7番窓口まで搭乗手続きにお越しください。」」 よく見ると空港のロビーじゃないか。 ん⁉ って今「お亡くなりになられた」って言ったよな⁉   周りを見ると窓口に向かって何百人もの人間がゾロゾロと歩き出していた。 「アナタは何で死んだんですか⁉」 突然後ろから声を掛けられてビックリして振り返った。 そこには50代後半位のやつれたオジサンが立っていた。 「私はねぇ、会社の社長をしていたんですが、この不景気で借金がかさむばかりでねぇ。 さっきビルの屋上から飛び降りたんですよ。」 何だって⁉ 「しかしアレですねぇ、自殺すると自縛霊となって現世をさ迷うとか聞いてましたけど、ちゃんと天国に行けるんですねぇ。ヒッヒッヒッ」 ヒッヒッヒッじゃねぇよ。 じゃあ俺は死んだのか⁉ そういやとっさに黒猫を避けた瞬間、滑って路上に投げ出されたっけ… ( 畜生‼チェリーのまま死ぬのかよ。 せめてあと一日待って欲しかったなぁ… ) 諦めた俺はトボトボと3番窓口に向かって歩き出した。 じゃあさしずめここは三途の川ってとこか⁉ 霊界も進歩しているんだな、クックック… 何だか笑えてきた… 絶望すると笑いが出るんだろうか。 ‼ 待てよ、三途の川って事は飛行機に乗らずに引き返せば現世に帰れるんじゃ… 臨死体験をした人の、三途の川を渡らずに帰って来たら生き返ったなんて話を聞いた事があるし。 そんな事を考えていたまさにその時。 「死ぬのはイヤだぁー‼」 突然一人の男が搭乗窓口と反対の方向に向かって走り出した。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加