覚醒

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覚醒

事故から2週間が経っていた。 幸い左足の骨を折っただけで1ヶ月程度で退院出来るそうだ。 生死の境をさ迷うほど頭を強く打ったのに脳には異常が無く、医者も首を傾げていたそうだ。 親父は息子の命の危機にも一度も顔を出さず 「こんな所で死ぬような運の無い人間なら響家にはいらん‼」 と言っていたそうな。 親父らしいな。 歌織は毎日のように見舞いに来たが、あの日はエッチOKだったの⁉とはとても聞けず、悶々とした毎日を過ごした。 「響さぁ~ん❤検温の時間ですよぉ❤」 担当看護婦の井呂毛さんだ。 「真希亜クン、メールしてね❤」 井呂毛さんはそっと俺の掌にメアドが書かれた紙を忍ばせた。 歌織って彼女がいながらドキドキする俺だった。 「井呂毛さんって綺麗だよなぁ、ねぇ真希亜クン」 同室の小池さんだ。 名前は田中さんだったが、『ラーメン大好き小池さん』に瓜二つなので密かにそう呼んでいた。 「井呂毛さんって下の名前が達譜理子さんっていうんだよ。 ピッタリな名前だよなぁ❤」 『いろけたっぷりこ』ってどんな名前だよ。 「田中さんは井呂毛さんが好きなんですか⁉」 「ば、ば、馬鹿言っちゃいけないよ💦 僕なんか月とスッポンだよ。 でも死ぬ前にあんなに綺麗な女性とエッチしたかったってのは本音だけどねぇ」 言葉が出なかった。 小池さんはガンで余命3ヶ月らしく、しかも三十路を過ぎてまだチェリーらしい。 夜になって井呂毛さんにメールをしてみた。 ✉「入院生活は暇ですよぉ😖」 すぐにメールが返ってきた。 ✉「真希亜クン❤嬉しいわ✨ 夜勤じゃなかったらすぐに返事するからいつでも✉してね❤」   キーーーーーン💥   突然の頭痛‼   ††『真希亜クン❤下半身が寂しいみたいだから明日の夜中に私が夜這いに行くわよ❤ 私、真希亜クンの事とっても気に入っちゃったわ😍』†† 何だ今のは⁉ 一瞬頭痛がしたと思ったらケータイ画面が違う画面に変わって見えたぞ。 気のせいだったんだろうか……
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