Scapegoat

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「おいおい、喋りすぎだぞ。」 流石にまずいといった感じで、青い男はサトシを止めた。 「良いじゃないか。 この前から皆で話してたように、コウヤがリト兄の言うとおりの人間なら仲間になって貰いたいよ。」 白銀の少年は、仔犬のように微笑む。 青髪は、弟の目を見ながら考え込んだ。 「そうだな… それでは俺から説明しよう。」 レイピアのような青い眉に力が入る。 その目力はコウヤを思わず身構えさせた。 「僕たちは内閣総理大臣、円輝道の養子だ。 自己紹介が遅れて申し訳ない… 僕は円家の長男の輝だ。 ヒカルと呼んでくれると嬉しい。」 男は急に丁寧な態度に転身し恭しく礼をつくした。 身に纏う紳士の空気は、彼の言葉の重みを荘厳と言うべきまで昇華させる。 「そして、僕達は日本を守るための秘密機関、ウィザードの一員だ。 コウヤ君。君の力を貸して欲しい。 これから世界は間違いなく荒れる。 是非日本を守るため、共に戦おうではないか。」 コウヤはヒカルの真っすぐな青い瞳に視線を捕えられた。 心が揺らぐ。 戸惑いの色を見せるコウヤにゆっくりと近づいた長髪の男は、肩にそっと手を添わせてきた。 不思議と心を許してしまいそうになる。 「今すぐに答えなくても良い。 またいつか返事を聞かせて欲しい。」 優しく微笑んだ青髪は、梅やしぃ、そして壁際で動きを止める子供達を見渡した。 「実は、ここに来たのはリトに頼まれたからでもあるんだ。」 ヒカルは口元にわずかな微笑みを見せた。
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