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subject[Day when Ｃ died.]
聞いて華やかに演出する
ﾌﾞﾗｲﾀﾞﾙｽﾀｲﾘｽﾄ部長の私は
話して賑やかに演出する
ﾌﾞﾗｲﾀﾞﾙMC主任の
巧みな話術に騙されて
気付けば付き合ってた。
初ﾃﾞｰﾄは丸の内。
ｼｬﾝｸﾞﾘ･ﾗ ﾎﾃﾙでの式の後で
ﾄﾞｺへ行くのかｽﾘﾙな私を
ｶﾚは西へ2分21秒歩いて
東京駅の大丸の8階の
ｲﾉﾀﾞｺｰﾋｰへｴｽｺｰﾄした。
東京ﾉｲｽﾞが
ｼｬｯﾄｱｳﾄされた夜景が
静夜を演出してくれたけど
穏やかな至福ﾀｲﾑを求めた私の
のぞみは
ｶﾚの饒舌という情熱に
あっさり打ち砕かれた。
ｺﾛﾝﾋﾞｱのｴﾒﾗﾙﾄﾞｱﾒﾘｶﾝｺｰﾋｰとｸﾘｰﾑﾏﾛﾝあんみつ豆を僕に下さい。ﾌﾞﾗｲﾀﾞﾙｽﾀｲﾘｽﾄ部長には、ﾎｯﾄｺｰﾋｰのｱﾗﾋﾞｱの真珠とｹﾃﾙの重厚で奥行きのある今夜のお勧めｽｲｰﾂを1つｾｯﾄで添えて下さい。そしてお店様の閉店時間の20分前に僕にﾓｶｱｲｽ1つと部長にｺｺｱｱｲｽを1つお届け願います。
まるでﾁｰﾌｳｪｲﾀｰ風の注文を
聞いた私はｺﾚが最初で
最後のﾃﾞｰﾄだと決めた。
なのに私の耳はｶﾚの舌に
丸1年も騙され続け何度も
大丸のｲﾉﾀﾞｺｰﾋｰでﾃﾞｰﾄした。
たまには私だって喋りたいわ。客の話を聞いてｶﾚの話を聞いてｶﾚの話に引いてそれだけで1日が終わる。今日の新婦も綺麗だったと毎回毎回話すけど一生で一番綺麗な時の他人様のｵﾝﾅをそんなに褒めなくてもいいし、中の下ﾚﾍﾞﾙのｵﾝﾅを綺麗に見せてるのは私の腕なのよ。
と思うけど話せるｽｷﾏがない。
翌週の昼また丸の内で披露宴。
仕事を終えた私達は
また東京駅へ向かった。
そして私は
のぞみ229号で
2時間21分かけて
京都へ連れてかれた。
車内で一言も話さない
ｶﾚからは殺気さえ感じた。
駅を降りたｶﾚは無言で
私の右手を握り北へ歩いた。
五条、四条を抜け烏丸の
大丸で立ち止まったｶﾚは
無言で振り返り
日航ﾌﾟﾘﾝｾｽの16階を眺め
更に北へ2分21秒歩き 私を
ｲﾉﾀﾞｺｰﾋｰ本店へｴｽｺｰﾄした。
京都ﾉｴﾙが
ｲﾝﾌﾟﾗｲされた庭園が
星夜を演出してくれた。
ｶﾚは終始無言で
私の愚痴や他愛もない話を
初めて聞いてくれた。
ﾏｲﾙﾄﾞなｶﾚとﾜｲﾙﾄﾞな私は
初めて逆の時間を過ごした。
店を出るとｶﾚは
初めて逆の左側を歩いた。
無言で手を握った。
ひと気ない夜の高倉町の
校庭の前にさしかかるとｶﾚは
親指と
小指と
人差し指と
中指の
温もりを外し
薬指に
冷たい金属をはめた。
あげるよ。
だろ。
なろうか。
挙げるか。
ｲﾌﾞに。
こうして私に対する主任の
主語は一生を終え
聖夜に そっと
主人になりました。
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