幸せの日々

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時計が午後一時を 回る頃には隆明の準備も ばっちりに整っていて。 後はカルテを持って 患者の病室を回るだけだ。 しかし、この病院は五階まで患者の部屋があり 統べて終わる頃には、 もう既に七時を過ぎていた 「やっぱり七時を過ぎてしまったな。」 隆明は腕時計で 時間を確認して困った様に頭を掻いた。 回診の時はいつもこうである。 何故かというと、 隆明は腕の立つ良い先生として患者に知られていて 老若男女とはず、 患者にとても人気があり 回診に行けば、 他の病室からも患者が隆明の元に集まってくる。 それこそ、患者の中には 「先生のお陰 で助かりました。」とか、 「先生が寿命を延ばしてくれた。」であったり、 「先生が居なければ今頃私は死んでいた。」 など、中には大袈裟な事まで言われる。 勿論、隆明も 医者である事に誇りは持っていて、 手術の時も迅速な判断で 担当した殆どの 患者を何度も救ってきた。 だが、さすがに 七時を過ぎると、 やはり多少は気が滅入って来る。 更に今から先程回診した 患者の状態、容態などを チェックして記録して、 目の前に山ほど積まれたカルテと一緒に パソコンにデータ入力しなければならなかった。 この作業が一番疲れる。
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