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――何故あの黒布はとれない?
見たところ、紐なんかで布を落ちないよう固定してる訳ではない。
握りこぶしが見えるから、手で固定してもいない。
つまり、本当に頭から被っているだけの状態。
それならば、少し人にぶつかっただけで、ずれて落ちてしまうだろう。
でも、あの黒布は一度も落ちてない。
つまり、あの子は一度も人にぶつかっていない。
「―――、」
この人混みで、一度も?
普通の人間にそんな事できるだろうか。
「おい、沖田?」
急に固まってしまった沖田を見て、訝しげに斎藤は声を掛けた。
「斎藤君…。」
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