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「理事長から珍しく、“転入生の姫神彰裏を丁重に迎えろ”…との伝令により、本日は我々が御迎えに参りました」
などと、一から十まで丁寧に今までの経緯から総てに至る解説してくれる。気持ちは有り難いが、話が長いのは気が滅入ってしまう。
そうとも言えないので、黙ってすっかり染み着いてしまった特技の一種と言ってしまえる
その名も――、
「何でもかんでも聞き流し大作戦!」‥を試みた。
案の定、説明は長い。
流石の母も詣ってしまったのか、押し黙った状態
それを悟ったのかどうなのかはよく分からないも説明が終わった。
「あ…長々と申し訳ない。大丈夫でしたか?」
『いえいえ‥』としか言える筈もなく、虚しい時間だけが過ぎ去って行くばかりだ。
「では…彰裏様」
「…‥?」
「外に車を待たして居ます。行きましょうか?」
にっこりとした笑顔でこちらを見つめてくる突然の訪問者に対し、車を待たして居るのにさっきの長々説明は一体なんだ、そう疑問に思ったが言うのは面倒だから止めておく。
素直に頷くとまた笑顔になった
「はい」
「…うん‥」
「彰ちゃん…ちゃんと、ご飯食べるのよ?お風呂も、お着替えも!それから……」
またも延々と続きそうな勢いを見せる母には多少呆れる部分があるも、無表情ながらも微笑みを表す。
「…行って、きま‥す、」
そうすれば、母も微笑みを浮かべて言ってくれた。
「‥行ってらっしゃい!」
斯くして、俺は何とか家を出て車に乗り込んだ。
この先、予想外の大変な目に遇うとも知らずに――
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