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だからこそ今年は花火大会に関しては一切触れないでいたのに、菜月の目の前には花火大会のポスターがあったのだ。
明日香はなんて目敏いのだろうとさえ思った。
そして、そう思ってしまう自分も嫌になった。
「なんか今日元気ない?」
明日香が菜月と花火大会に行くのが憂鬱だと思っているとは知らずに菜月は明日香に声をかけた。
「そ、そうかな。」
――菜月のように思ったことをすぐに出せる性格だったら、この関係はすぐに壊れちゃうのかな。
明日香はそう思いながらも、菜月と縁が切れることを恐れていた。
もし菜月と縁が切れてしまえば、菜月と仲のいい他の友達とも縁が切れるだろう。
暗い夜道を誰と帰ればいいだろう。
今年の花火大会には誰と行けばいいのだろう。
そんな不安が明日香の中に渦巻いていた。
結局、明日香は菜月といつも一緒にいたため、一人になるのが怖かったのだ。
「じゃあ、また明日連絡するね。」
菜月はそう言って自分の帰路に着いた。
一人になった明日香は花火大会をどうやり過ごすか考えていた。
そして、去年の花火大会を振り返った明日香はハッとしたようにあることを思い出した。
そのときの明日香の心の中には一人を恐れる自分が消えていた。
去年の花火大会を思い出して、今年はあえて一人になりたいと思ったのだ。
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