307人が本棚に入れています
本棚に追加
―――
結局来てしまった。
姫路宅へ。
確認は取らなかったが多分愛佳ちゃんは学校を休んだであろうから家にいるはず。
そもそも送られて来たメールから推測するに、学校にはとても行ける状態じゃ無いはずだ。
だって熱が39$だもん。
日本円で4500円位か。
良い小遣いだぜ。
俺はそんな事を思いながらチャイムのボタンに手を伸ばしたんだ。
だがボタンを押す事が出来なかった。
頭に嫌な事がよぎったんだ。
「親とか出てて来たらどうしよう……」
そう、親が出てきたら何て説明するんだ?
友達はいくら何でも苦し過ぎる。
かと言って真実を述べるのは少し避けたい。
あわよくば親がいない複雑な家庭である事を祈りたいが、そんなのはフィクションの世界でしか有り得ない。
つまり……
親が出て来る可能性がある限り、俺はボタンを押せない。
この家に俺による「ピンポーン」の音は鳴り響く事は皆無なのである。
俺がそんな不安を抱きながら右往左往していると、背後から不審者を見つけた時の様な低い重低音の声が聞こえたんだ。
「な、何やってるの?」
俺はその声に反応する様に振り向いたさ。
そして、そこにいたのは――
「姫路しゃん!!!!」
あまりの驚きに声が裏返ってしまった事を深くお詫び申し上げます。
「いや、その……これは……」
ダメだ、何て言って良いのか分からない。
俺が姫路さんに歯切れの悪い言葉を放つと何かを察した様に姫路さんは自宅の扉を開けながら言った。
「入って。愛佳のお見舞いでしょ?親は仕事で夜に帰って来るから安心して」
「っあ……はい」
意外だった。
追い返されるか不審者として警察に通報、もしくは近所の方を呼ばれると思っていたから。
最初のコメントを投稿しよう!