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未だに状況を把握し切れていない幸。とにかくこの狭っ苦しい場所から移動しようと自身の体を動かそうとした時だった。
「嗚呼! まだ動いてはなりません! まだ容器の生成が完了していないのです! 今動かれては身体が……」
何か下から聞こえてくるような気がするのだが如何せん眠いのだ。眠気と窮屈な事での鬱憤のおかげで言葉が幸の耳へと入る事は無かった。
「ああ、あああああぁぁぁぁ……」
陣の外へと足を踏み出した瞬間、巨体を形成していた肉片が少しずつ腐っていく。足、太股、股、腹、胸、腕、首、そして頭。全ての肉が腐り落ちた。
「そ、そんな……私の苦悩は、覚悟は何だったのだ。此では史実に泥を塗っただけではないか」
「おいたわしや、帝王様。此では現状打破など夢の又夢になってしまわれる。何としてでも此の事を隠ぺいするのだ!!」
臣下達は放心している主君を慰め、いたわり、事を隠す為に努力した。この行いが知れ渡れば目前に鎮座している男は主ではなくなる。そうなればまた血身泥の覇権争いが起きる。さすればこの国は滅びる事から避けられなくなってしまう。時間が無いのだ。
この国には。
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