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元々この魔界には地を統べる者は存在しなかった。
だが、ある時人界の一国の主である男が魔王討伐という銘を掲げたのである。
源来、魔界に住まう者は人との関わりを極力持たないように意識して行動する。が、時には好んで人里を荒らす者がいなかった訳ではない。
だがそれは人にも当てはまる事であり、こちらが一方的にという事はなかった。常に均衡は保たれていたのである。
そんな中で不可思議な銘を掲げる輩がいた、というだけの話である筈だった。
予想に反して銘に賛同するものが多く、波に乗った勢いで怒濤の侵略劇が行われた。
魔界の者達は一度も自身の領地を侵略されずにいたわけだ。
対して人は争い、滅ぼし、また新たに生まれ行く者達。その一生は比べれる筈もなく圧倒的に短い。だが短いからこそ彼らは強い。ただ一度輝こうとするから。
甚大な被害を被った魔界では、急遽各族長を中央都市に集め会議が醸し出されていたのである。
話し合いの結果、誰かが全てを纏める者となり主導していこうというものであった。
結局のところ人の真似事でしかなく、自ら人間達の言う魔王という存在を作っただけであった。
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