二、死体がでたぞ

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一方、沖田と一枚壁を隔てての屋内での死体検案は、新たな展開を見せていた。 目立つ腹部外傷のほかに体表面にある何らかの変化を探していたひいは、首に索条痕や扼痕もないことをふまえ、頭部の検証に切り替えていた。 「大概外傷は頭部か頸部に多いんですが、特に見た感じ出血はないんですよね。前頭部に殴られた跡もないし…。」 いつの間にか傍らにしゃがみこんで一緒に遺体を調べる土方が期待するように、ひいは話しかける。 「頭部の出血では死斑が減色します。可能性としては高いのですが、でもそれを確かめるには簡易な解剖をしないとなりません。頭蓋骨をあけて、確認できればいいのですが。」 土方は決して遺体には触らないが、神妙な面持ちで全身を眺めていた。 愛嬌のある瞳に鋭い表情をのせて、ひいの言葉に首をひねる。 「ここじゃ難しいですね。頭蓋骨を開くとなると、どこか場所を移動しないと。」 土方は役人の顔を伺うが、やはり頷かれる。 「ですがまぁ、下手人が浪士でないことがわかりましたからね。死なせた者にわざわざ刀傷をつけて逃げるなんて、時間の無駄でしょう。それに刀傷にしては稚拙だ。なんか理由があったんじゃないですかね。」
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