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「頭蓋底を骨折してますね。後頭部に殴られた跡とか出血はないけど、よく触ったら皮下出血してる。もしかして、ここの机の角にぶつけたのかな。後ろ向きに…転んだはずみ?」
「死因は頭部の骨折ですか?」
細々と一字一句逃さないよう調書を書き留めていた役人が手を休めずに聞く。
ひいは晋太郎の用意した水桶で手を洗うと、思案するように上を向いて首を傾げた。
「恐らく脳は損傷してますね。でも元々頭に基礎疾患あった可能性も捨てきれません。可能性としてひとつは、骨折のほかに元々脳動脈瘤があって後頭部打撃の衝撃で破裂し、重度のくも膜下出血から脳ヘルニアをおこした。ふたつめは、骨折により直接的に硬膜動脈から出血をおこし脳ヘルニア。どちらにしろ脳の不可逆的機能障害で、即死はないにせよ意識は消失しますから容疑者は焦って偽装にはしってもおかしくないと思います。でも……うーん、開きたいなぁ。」
「では、今の段階でわかるのは、犯人は彼の頭部に外傷を負わせもしくは転倒事故で死に至らしめたあと、物盗りに見せかけるために物色した跡を残し、更にそれを最近横行している浪士の強盗に見せかけるために腹部に刃物による損傷を与えた。でも被害者には何か元々疾患があって、外傷による影響をうけやすかったかもしれない。それは、解剖をせなわからへんということですね。」
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