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一つの花がありました。
とてもきれいな花で紅色のような桃色のような藍色のような、
そんなきれいな花でありました。
その花は一人の人に大層恋い焦がれました。
昼も夜もその人のことを思いました。
その人はたまにその花の垣根の前を通り過ぎます。
そんな時
紅い花は決まってドキドキしました。
もともと赤い花はもっと紅潮したように思われました。
いつしか花は思います。
あぁ、あの人に会いたい。
もう花は時たまあの人が通るだけでは満足出来なくなっていたのです。
紅い花はずっとずっと思いました。
あぁ、あの人に会いたい。
星の瞬く夜
花は決意しました。
この川を下ってあの人に会いに行こう。
花の垣根の下には川が流れていました。
この川を下っていけばあの人に会えるはず。
花はそう思ったのでしょう。
花はぽたりと川の中に身を投げました。
ゆらゆらと静かに揺れながら
ちゃぽんと川に着水しました。
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