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「大和!良かっ…、た…」
大和の安全にほっと息を漏らすも、視線を下にさげていけば、何かを彼は持っていた。
「そ…れ…」
それは、人間の腕であった。
目を見開き、言葉を失う。
「あぁ…この腕?はは、ねぇ、すごいだろ?俺が殺したんだ!」
狂気に満ちた彼は、指先についた血を、舐めとっていた。
「--…っ!」
それだけで何か人でないもののように思えて、息を呑む。
「ほら見ろよ。それ」
言われるがままに大和の指す方へ視線を向けた飛鳥の瞳に映ったのは-…、
変わり果てた理恵の姿だった。
「なっ…り…え…?理恵!」
慌てて駆け寄り、理恵を抱き起こす。
傷だらけの彼女は、左腕が無惨にも切り落とされていた。
「兄貴、俺ね、好きだった…理恵が」
「……」
ただ涙を流し、静かに理恵の死を受け止めるしかなかった。
それに追い討ちをかけるように、雨が降り出した。
やがて雨は激しく、強くなる。
「だからさ、手に入らないなら壊そうと思ったんだ…だって、理恵は兄貴が好きなんだから!!」
大和の言葉にハッと顔を上げ、弱々しく首を振る。
「お前は、勘違いしてるよ…理恵は、」
「やめろ!聞きたくない!!」
言葉の先を遮るかのように叫び、頭を抱えうずくまった大和は、やがて顔を上げ、ぽつりと喋る。
「…そうだ、兄貴がまだだ」
血にまみれたナイフが、大和の影から現れた。
ナイフに当たり、下へと落ちる雫は赤く染まっている。
「なっ…」
驚き、立ち上がるが既に遅く、大和は目前に迫っていた。
「死ねよぉ」
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