第1話

7/9

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
何かが、倒れる音がした。 草むらに、血溜まりが広がっていく。 「…は、ははっ… あははははははっ!!」 --周りの音が、遠ざかっていく。 雨の音だけが、うるさいくらいに耳に響いた。すると突然、静寂が訪れた。 「死にたくないか」 (……誰…) 虚ろな目には、何も映ってはいない。 「あるいは、死ねないのか」 (……俺…は……止め…なきゃ…、あ…いつ…を) 「いいだろう…確かに望み、受け取った-…」 無音だった世界に、すっと音が戻ってくる。 霞んで見えなかった視界が、今ははっきりと世界を映していた。 「俺…は…?」 呆然として当たりを見回すが、暗い林が広がっているだけだった。 「…にき あ…にき…」 すると、消え入りそうな声が耳に入ってきた。 「どうして…俺の… 俺の…体……」  
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加