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はっとして自分の身体を見る。
着崩された制服、血に染まった両の手-…、それは紛れもなく大和のものだった。
「俺じゃ…ない…?これは…大和…」
「なんでだよ…なんでだよぉぉ…?」
苦しげに顔を歪め、こちらに手を伸ばす自分。
徐々に生気の失われていく自分が、瞳に映っていた。
「返せよ…、か……」
やがてそれは、事切れた。
--まるで
時が止まったようだった
わからない 何も
考えられない 全て
(聞こえないんだ、音が)
--目の前で崩れた自分
でも生きている俺
(見えているものは 何だ…)
「哀れな男だ。自分で与えた傷が仇となったな」
すると、倒れた自身の体の背後に、先程の男が現れる。
雨に濡れない、男であった。
「俺はクロノ。どうだ?弟の体は…」
そんな非現実な状況の中、飛鳥は自分でも驚くほどに冷静だった。
「雨に…濡れない、男-…、人じゃ…ない…?」
クロノと名乗った男は、笑みを張り付けたままで口を開く。
「気になるか、俺のことが…。まぁ、まずはお前のことからだ」
「俺の……」
「まるで無頓着だな。お前自身のことだというのに」
少しも突っかかってこない飛鳥に、鼻で笑いながらも言葉を続ける。
「よく、聞け。お前の体と弟の魂は死に、弟の体とお前の魂は生きている」
「……なんだって…?」
--何を、言ったんだ、この男は。
「弟の罪は、兄を殺したこと。お前の罪は、死ねないと願ったこと」
「--…!」
「……俺の話は止めた方が良さそうだ」
驚きで目を見開く飛鳥には、もうほとんど耳に入っていなかった。
「さあ、これからどうするかはお前次第だ。どう生きるかも全て、な-…」
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