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「タイムお願いします」
三番バッターにセンター前へ持っていかれた所で、キャッチャーの純也が審判に言った。
場面は九回裏ツーアウト、一点のリードがあるとは言え塁はすべて埋まっていた。加えて次のバッターが高校通算六十ホーマーを誇る四番、山上ならばタイムは当然だろう。
マウンドに内野手全員が集まり、純也は口を開いた。
「目に見えて球威が落ちとる。正直もう手が無いわ。……とりあえず直球をクサいとこ突いて打たせていこうや。内野、死ぬ気で守るで!あと一つで甲子園や!!」
オゥッ!!というかけ声を上げ、皆が元の守備位置へ戻り始める。
「航平、わかっとると思うが、フォークはもう止めとき。ランナー三塁やし、もうお前も握力が限界来とるで」
ああ。と返事はしたものの俺は一人、昔のことを、親父の話を思い出していた。
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