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「だが、それには一つ問題がある。それは、宝玉に残っていた二つの霊力。この二つの霊力から、儂はもう一つの事を知った。それは、二つの霊力の質が全く同じという事。これが何を意味するのか…天丸、ぬしにわかるか?」
天狗に質問を投げかけられ、天丸は考えてみた。
師匠はまったく同じ質の霊力と言った。
たとえ親兄弟、双子と言えど、霊力の質は異なってくる。別人である以上、まったく同じという事はありえない。
しかし、師匠はまったく同じと言い切った。
それは即ち、同一人物という事になる。
いったいどういう事なのか…天丸は師匠に、自分の答えと生じた疑問をぶつけてみた。
「魂の分裂よ…人の魂は大きく分けて、陰と陽の二つに分けられ、それぞれが上手く釣り合い、一つの魂となっている。しかし、一方が大きくなり、均衡が崩れた場合、人の人格に異変が生じる」
師匠の答えに、天丸は、再び首をかしげた。
「けど…それやったら、やっぱり霊力は一つとちゃいますん?二つの霊力っちゅう事にはならんと思いますが…」
「確かに、ただそれだけなら二つの霊力が残る事はない。しかし、その者が凄まじい霊力を保持していた場合…霊力を媒介に構成された体に、分かれた一つの魂を宿す事により、霊力の質が全く同じ、もう一人の人物を作り上げる事が可能となる。恐らくその者は、自らの魂を陰と陽の二つに分け、作り上げた体にもう一つの魂を宿した。そして今、強力な力を持っているのは陰の魂…」
その言葉を、天丸はすぐさま否定した。
「いやいやいや、そんなんありえへん!確かに、理屈やったらそれは可能かもしれんけど、それをやるのにどれだけの霊力がいる思うてますん!?ワイはもちろん師匠かてそんな事できまへんやろ!?」
「確かにな…儂にもそんな事はできん。だが、儂を遥かに超える霊力の持ち主など、歴史を振り返ればいくらでもいる」
「歴史振り返っても、そんなにはおらへんと思うけど…それに、それって人間ですやろ?」
「元、人間じゃよ。神に等しい程の力を持つ、人間じゃ」
「神に等しい程って…そんなアホな…」
天丸は川を見つめた。
師匠の言葉がすぐには信じられなかった。
質の悪い冗談かもしれないとも思っていた。
だが、天丸は自分の師匠が、自分より遥かに世の中の事を知っている事も、こんな時に冗談を言ったりはしない事もよくわかっていた。
師匠が言った以上、どれほど
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