26人が本棚に入れています
本棚に追加
信じられなくても、それは真実なのだろう。
そして光明の相手は、自分や師匠を超える程の、計り知れない霊力の持ち主という事になる。
光明の前に立ちふさがる、あまりに大きく高い壁に、天丸は再び気の毒に思った。
「その者が悪しき心を持つ以上、光明はいずれその者と争い合う運命となろう…しかし、今のあの者はあまりに無力…」
そこまで言うと、天狗は再び目を閉じた。
「お師さん…何を考えてはるんでっか?…! まさかっ!」
天丸は、天狗の考えて察知し、驚きの声をあげた。
「あいつに天狗の術を教えるつもりでっか!?そら無茶ってもんやで!確かにあいつは強くならなあかんかもしれまへん。けど、あいつはまだまだ幼い童や!きっつい修行に堪えられるとは思えへん!それに受ける資格も持っとらん!」
「だが他に方法もあるまい?無論試練は受けてもらう。その合否によっては修行を受けさせてやる事はできん。だが、もしあの者が、資格がある者ならば、儂は天狗の術を教えようと思う」
「せやけど…」
「ならば天丸…ぬしならばどうする?ただ人の剣術のみを教えてしまいにするか?確かにそれも良いかもしれん。それでも敵を打ち砕く程に強くしてやれる事はできるだろう。しかしそれは、相手が同じ人間ならばの話しだ」
その言葉に、天丸は押し黙ってしまった。
そう、確かに相手がただの人間ならば、それで充分だろう。
剣にむいていなかったとしても、槍でも、弓矢でも構わない。
無手の武術だってある。
ただしそれは、相手が人間であればこその話しなのだ。
だが相手はただの人間ではない。
恐ろしい程の力を持つ何者かなのだ。
宝玉に残された強力な霊力が、それを物語っていた。
「それに人間に、それも童に天狗の術を教えるのは、初めてではあるまい?」
天狗は再び目を開き、天丸に笑いかけた。
「何百年前の話しを持ち出すんでっか…そら確かにあの人もまだ童やった…けどあいつよりは少し上って感じやったし、あの時教えたのは一個だけですやん…今度は全部教えるつもりですやろ?」
天丸は、呆れた顔でため息を吐いた。
「まぁ…何にせよ、まずは試練やね。せやけど、もしあかんかったらどないします?」
「それは、その時に考えよう」
「その時…て…ホンマいきあたりばったりっちゅうかなんちゅうか…」
天丸は再びため息を吐いた。
そんな天丸に、天狗は、やかましいわい!と一喝した。
最初のコメントを投稿しよう!