天狗の弟子に

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天丸の姿を見るや否や、光明は驚きの声を上げた。 「何を驚いとんねん。お師さんが外で待っとる。ついて来ぃ」 そう言い残すと、天丸は、外に向かって歩き出した。 起きたばかりの光明は、なかなか頭が回らなかったが、少しずつ頭がはっきりとしてきた。 それと同時に、気持ちが落胆していく。 そんな気持ちのまま、光明は、のそのそと立ち上がり、天丸の後を追って外へと歩きだした。 外に出た光明を、太陽が照らしつけ、その眩しさに光明は思わず目を細めた。 明るさに慣れてくると、河原で天狗が岩に腰をかけている姿が目に映った。 天丸も、近くの岩に腰かけている。 天丸に手招きされ、光明は天狗に近づいていった。 座りなさい、と天狗に促され、光明は草原に腰を下ろす。 そのままじっと天狗を見つめた。 「光明よ。お前の家の事についてだが…」 家の話しを持ちだされ、光明は思わず期待に胸を躍らせ、身を乗り出した。 天狗は少し間を置くと、続きを話し始めた。 「……すまぬが…現時点で、お前を家に帰してやれる方法はない」 天狗の無情な一言に、光明の顔はみるみる悲しみに染まっていき、そのまま俯いてしまった。 もしかしたら、と思っていただけに、ショックは大きく、目から涙が溢れそうになる。 「だがな、当てがないわけではない」 続いて投げかけられた言葉に、光明は驚き顔をあげた。 「この世に刻の鏡と呼ばれる物があり、それがあれば、お前は家に帰る事ができるやもしれぬ」 「ど…どこにあるの?」 泣いた烏がもう笑ったかのごとく、光明は笑顔になり、天狗に詰め寄った。 「それは、わからぬ」 しかし、再び帰って来た答えに光明はまたしてもうつむいた。 と思うと、すぐに顔を上げ、再び天狗に詰め寄った。 「わからないなら、探せばいいんだよね!?僕探すよ!頑張って探すよ!」 家に帰る事ができるなら何でもする、といった感じで、光明は天狗に言葉を投げかけた。 そんな光明を天狗は諫めながら話しを続ける。 「確かにわからぬなら探せばよい、しかし、ただ探せば良いというものではない」 「どうして!?その鏡を見つければいいんでしょ!?それがあれば、僕は帰れるんでしょ!?」 天狗の言葉が理解できず、光明は問い詰めた。 「その鏡は、今悪しき者の手にあるやもしれぬ。やすやすと貸し与えてくれるならまだしも、悪しき者相手に、そううまくいくものではない事は明白」
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