天狗の弟子に

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人間を超えた力、すなわち天狗の術や」 「天狗の術!」 とたんに光明の頭の中に、戦隊物の主人公達の姿が浮かんだ。 格好いいコスチュームに身を包み、様々な武器を操って、技を繰り出し、悪者を倒していく。 光明の頭の中で、そんなヒーロー達と共に、自分も悪者と戦っている、そんな光景が浮かび上がっていた。 「高く飛べるようになったりするの!?」 「おう、なるで」 「ものすごく力が強くなったりするの!?」 「メッチャ強なる」 「僕、それやりたい!!」 光明は興奮し、その目は期待にキラキラ輝いていた。 「お…おう、やる気があるんはええこっちゃ」 光明の異常な興奮に、天丸は少々圧されながらも、まぁこのくらいの子供は、そんなものなのだろう、とおぼろげに思っていた。 子供というものは、物語の英雄に憧れたりするものだ。 物語は親から子へ、子から孫へと代々語り継がれ、子供は、その英雄になりきって、ごっこ遊びをする。 そんな子供の姿を、天丸は何度も見てきた。 そういえば、光明の水筒には、何やら全身を奇妙な装束で包んだ五人の人の絵が描かれていた。 自分にはよくわからなかったが、恐らくそれが光明にとっての、英雄、なのだろう。 そして、そんな風になりたいと思っているのかもしれない、と天丸は思っていた。 なおも興奮し続けている光明を、天丸が落ち着かせようとしていると、天狗が帰ってきた。 「お!お師さん、帰ってきはりましたか。首尾はどないだっか?」 「うむ、話はついた。明日より光明を通わせようと思う。…ところで、光明は何をそんなに興奮しておる?」 天狗は、天丸が落ち着かせようとする努力も虚しく、なおも全身からウキウキした気分を発している光明を見て、天丸に問いかけた。 「はぁ…ちょっとハッパかけすぎたみたいでして…」 天狗は未だ興奮してやまない光明をなんとか座らせ、自分も腰をおろすと、光明に話しかけた。 「さて光明よ、まずは試練を乗り越えた事、おめでとうと言っておこう。お前は天狗の術を覚える資格を得た」 「いつから教えてくれるの!?」 光明は興奮しながら天狗に問いかけた。 試練なんて、そんなものいつ受けたのだろう。 しかも乗り越えたって、どういう事だろうと、いう疑問も浮かんだが、すぐに頭の中から消え去った。 今の光明には、そんな事はどうでも良かった。 天狗の術、その事で光明の頭の中はいっぱいだったからだ。
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