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「修行は明日から始める。だが、その前にやらなければならない事がある」
「やらなきゃいけない事?」
光明は、途端にもどかしくなった。
今すぐにでも教えてほしかったのに、やらなければならない事があるとは、そんなわだかまりが、光明の心に湧き上がった。
「何をすればいいの?」
光明はふくれっ面になりながら、不満そうに、天狗に問いかけた。
「天狗の術を操れるようになる為には、大きな霊力が必要となってくる。しかし、お前はその霊力が飛び抜けて低い」
「霊…力?」
なんとなく聞き覚えがあるような言葉だったが、思い出せなかった。
「霊力とは、気とも呼ばれる、この世の全てに宿る、目に見えぬ力。その力なくして、天狗の術を操れる事は叶わぬ。したがってまずは、お前の内にある、その霊力を上げなければならん」
その言葉を聞いたとたん、光明はがっくりした。
すぐに天狗の術を教えてもらえると思っていたのに、出鼻を挫かれた気になった。
「まぁそんなに気ぃ落とすなや。物事には順番っちゅうものがある」
落ち込む光明を天丸が励ました。
さらに話しを続ける。
「ええか光明、こう考えるんや。霊力のない天狗の術、それはただの真似事、偽もんの術や。本もんの術には程遠い」
「本物の術?」
「そうや、光明、お前は本もんの術と偽もんの術、どっちの方がええ?」
光明は少し、う~ん、と考えてから、本物の方が良い、と答えた。
「そうやろ?その為には、やっぱり霊力上げんとあかん」
光明は再び、うん、と頷くと、天狗の方を向いた。
「心配せずとも、お前には必ず天狗の術を教える。修行は厳しいかもしれんが、しっかりとついてこれるか?」
「うん!僕、頑張るよ。頑張って霊力上げて、本物の天狗の術を使えるようになりたい!」
再び光明に興奮が戻ってきた。
天丸の言った本物の術という言葉が、とても魅力的に思えたからだ。
「うむ!ではこれより光明を正式に、儂の弟子とする。これからは儂の事は師匠と呼ぶように」
「はい!師匠!」
光明は元気良く答えた。
この日より光明は、鏡を見つけ出す為、そして家に帰る為、天狗の弟子になった。
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