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お母さん!沙良! 声にならない叫び声を上げながら、光明は暗闇が自分の方へ近づいてくるのを感じていた。 それは手だった。 真っ暗な暗闇の手が、自分に向かって延びてくる。 光明は、再び声にならない叫び声をあげた。 あの手に捕まると、恐ろしい事が起こる! そんな恐怖が光明の全身を支配し、なんとかそれから逃れようと、必死で体を動かした。 しかしそんな努力も虚しく、手はどんどん近づいてくる。 もう少しで体に触れてしまう! それほどまで近づいてきた時、うっすらとした光に包まれた何かが自分とその手の間に立ちふさがった。 光はまるで光明を優しく包み込むかの様に、手を伸ばしてくる。 光に抱きしめられた瞬間、光明は暖かさと安心感を覚えた。 (お…母さ…ん……?) 光が何者なのかを確かめようとして、顔を上げる。 しかし、それが何者なのかを確かめる間もなく、暖かさに包まれながら、光明は気を失ってしまった。
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