3/3
前へ
/18ページ
次へ
桜が咲いて、散っていく。 菜の花が咲いて、緑が茂って、 お隣の木が赤く染まるのを、あなたが褒めて。 冬は外に出ずに、二人で家に居よう。 買い出しは俺が行くからさ。 でも家の中では俺はずっと火燵に居て、料理が出来るのを待ってる。 たまには作ってあげるから。 あなたは75歳で亡くなった。 俺はまだ45歳だ。 まだだ。 まだ駄目だって。 俺まだ、子供だった。 こんだけ泣くのは、そういうことだろ。 早過ぎるよ……。 「善則、お前は一番の親不孝をしなかったから、偉かったぞ」 俺が小五の時に、俺と母さんを置いてった父さんが俺にそう言った。 「逆縁って言ってな、親より先に死ぬことだ」 ……母さん。 本当に……? そうなら俺、頑張るよ。 頑張って生きるよ。 もう逃げない。 15歳の頃とは違う。 もう俺は愛で満たされていて、空っぽじゃない。 周囲を愛することで。 俺は頑張れるみたいだ……。 だからね、トモちゃん。 君に大きくなったら、教えてあげる。 まだ5歳の君が、お父さんが生きてる理由のひとつだって。 だからどうか投げ出さないで、 諦めないで、 頑張って幸せになって下さい。 大好きだよ。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加