恐怖

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いつだっただろうか。 特別視したのは。 どのタイミングだった? 彼女が何をして、私の心が変わった? 分からないけれど、彼女は別だ。特別だ。 彼女が愛するものは、何だって覚えた。 温かいスープ。帽子や蝶ネクタイなどの小物。靴下の柄。チェック柄。ムーミンのケータイストラップ。 自分が中性的なくせに、中性的な男性が好き。 「好き」 いつも冗談で、そう私に言った。 「落ち着く」 そんなことを言った数日後に、 「結婚する相手は、落ち着く人がいい」 なんて言うのは、きっと天然だったんだろうと思う。 「好きです」 私のこの声は、彼女に届けず、いつも空気に溶け込んだ。 手に入れたかった。 「おねしょ……?」 起きた私に、彼女は僅かに震えた。 「大丈夫、大丈夫」 彼女の小さな肩を抱く。 「おこんなくて、いいの……?」 彼女の言葉に、ギクリとした。 「……うん」 いつまでも、 いつまでも、 子供で居て貰って構わない。 私の愛は異常だ。 健康で居て貰いたいけれど、社交的になるような育て方はしたくない。 「大丈夫、自然と、みんな大人になるもんだからね……」 .
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