花と虫

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僕は、生まれた時からずっと、性に関心が無かった。 そのことを誰かに告白すると、たいていは驚かれる。 でも僕からすると、周りが性に興味を持ち始めた頃からずっと、周りの方が『異常』という感覚だった。 女の子の下着が見えたくらいで。 女の子の胸が膨らんできたくらいで。 周りの人達はざわめき始めた。 互いの唇を合わせたり、 淫らな行為を妄想したり。 ……それらはただ不快なだけで。 そんなことは必要ない、と思っていたあの子供時代を、皆どうして忘れてしまったんだろうか? 僕は何もかも止まったまま。 躯だけは17歳らしいものに、順調に育って行った。 「キイチ」 僕の名前を片仮名で発音するのは、同じクラスの坂上君。 彼は「下ネタが苦手」だと言う。僕は彼と一緒なのだと、少し安心する。 「暑くない?」 にっこり笑って、階段の上から僕にそう問い掛ける。 「……そうだね」 僕は答える。 坂上君は優しくて、清潔感があって、汚れていない。 「キイチ、ここ、どうした?」 ある日坂上君が、僕の左の二の腕の内側に触れた。 「……」 ビリッ 何かが走った。 「……?」 見るとそこは、蚊に刺されていた。 「蚊?」 やっぱり、坂上君は、笑ってそう聞く。 「……うん」 そうだよ。 僕は、何だか変な感じだった。
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