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雄君がたまに、夕食の時にオレンジジュースがいいと言うのは少し食事らしくないとは思うけれど。
でも果汁100%のものだし、体に良いのは違いない。
今度ミキサーを買ってきて、生の果物からジュースを作るようにしようか。
もうすぐ夏だから、フルーツジュースを凍らせてミキサーにかけて、スムージーにするのも良い。パスタのソース作りにもあると便利だ。
夕食を片付けると、私は雄君と自分にホットミルクを用意する。
私達の生活は、『完成』されている。
おかげで私は、どこにも行き場がない。
19歳の頃。
私は、人生で一番大きな恋愛をした。
相手は妻子持ちの短大の先生。
一度だけ寝て、傷付けられた。
「……雄君」
私は雄君のことを愛してはないけれど、求める。
私がもう少女じゃないってことを、感じる為に。
「嘘じゃないよ。好きだ」
先生はそう言った。
「君はどうしたいんだ?ちゃんと言いなさい」
先生はそう言った。
「君にはもっと相応しい人が居る」
今後のことなんていい。
ただ今、現実に傍に居てくれればいいのに。
「美咲」
名前を呼ばれて、ギョッとした。
「何?雄君」
そうか。今私は専業主婦で、ここが私の居場所なのだ。
「明日は、チーズがいっぱい乗ったピザがいいな」
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