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「……ごめんなさい。ごめんなさい。産んでしまって」 おい ふざけんじゃねえよ。 いつ俺が謝ってくれっつったよ。 つうか壁に頭打ち付けて、一体誰に謝ってんだよ。 この家には、俺とあんたしか居ないのに。 中三で不登校の俺と、 45歳でバツイチのあんた。 なあ やめてくれよ……。 キツイのは、俺の方なんだよ。 俺の存在を、あんたが否定しちゃ駄目だよ……。 俺は、何も言えなかった。 母さんに、何も言えなかった。 ……俺は、空っぽだ。 母さん、……ごめんなさい。 それでもあの頃の俺には、前を見て歩き出す力には、ならなかった……。 「母さん」 俺は35歳になって、母さんは65歳になった。 病気で腰を悪くしたので、母さんは車椅子の生活を送っている。 「ヨシ君」 母さんは、目を細める。 「お仕事、頑張ってるの?」 俺は、脚に筋肉痛を感じながら答えた。 「超頑張ってるよ」 ほころびだらけの俺。 何の才能も取り柄もない俺だけど。 あなたが、大好きです。 だから、お願い。長生きして……。
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