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町外れの小さな港。
潮風に当たると、少し肌寒く感じた。
まだレンが居た頃、良く二人で来たなぁ。
いつも小瓶を持って、海に流してた。
―
『知ってますか?この海の言い伝え』
『羊皮紙に願いを書いて小瓶に入れて流すと…?』
『想いはいつか届くんですって、素敵だと思いません?』
目をキラキラさせながら、私に笑顔を見せた。
『レンはロマンチストなのね』
『そう言うリンこそ、タロットとか占いとか、おまじない、好きじゃない』
『それとこれとは違うわ。ところで何をお願いしたの?』
そう聞くと、レンは恥ずかしそうに俯いた。
そして一呼吸置いて、口を開いた。
『リンが幸せに暮らせますように…です』
顔を赤らめにこっと笑う。
その笑顔につられて、私も笑った。
『レン、ありがとう…』
『良いんです、リンが笑ってくれれば。それで僕は幸せなんだ』
流れていくガラスの小瓶。
小さく小さくなって見えなくなっていく。
レンの願いを込めたメッセージは、水平線の彼方へと静かに消えていった。
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