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「……あんたはさ、これから先どれだけ嘘つく気なの?」
責める口調ではない。
核心を突いた問いに、僕は再び壁を向いた。
嘘。
嘘。
嘘。
僕の代名詞みたいに、身体じゅうに張り巡らされた単語。
「……知るかよ、そんなこと」
ぽつりとつぶやいた声が、思いがけず微かに震えた。
「また佳奈衣みたいな子と付き合って、好きになれないで捨てるの?
一生繰り返し?」
とても静かに畳み掛ける真希の声は、確実に僕の傷口をえぐりにかかる。
傷口から血がドクドクと流れ出して、僕のすべてを真っ赤に染めていく。
一生なんてわからない。
いまを凌ぐことに精一杯で。
なりたい自分になれない自分を鎧で固めるのに精一杯で。
未来なんて、闇でしかないんだ。
きっと。
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