彼女

6/31
前へ
/321ページ
次へ
僕は驚きと呆れの入り混じった複雑な心境で、彼女をしばらく見つめていた。 「将太のこと、前からずっと好きだったの」 重ねられる言葉。 頑なに逸らそうとしない強い視線が、逆に僕のなかのなにかを打ち破っていく。 僕はただ、普通の男でいたいんだ。 それだけだ。 「……いいよ」 気づく前に、口が勝手にそう喋っていた。 「付き合おっか」 言って、笑顔を作れる最低男。 そんな男の隣で、なにも知らない佳奈衣も破顔した。 ごめん、佳奈衣。 僕は君を利用する。
/321ページ

最初のコメントを投稿しよう!

405人が本棚に入れています
本棚に追加