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初めてのライブはこっちを見ている客が一人もいない中、他のバンド目当ての客ばかりの中、ただ歌っていただけだった。
2回目のライブは連れを呼びまくって。
3回目のライブでファンなんてものができた。
俺が高校2年、千夏が中学2年。
千夏はバンギャってやつだった。
「Dualいいと思うんだけどなぁ。ハルちゃんかっこいいし、歌うまいし。曲も悪くないと思うんだけどなぁ。こんなビラじゃなくて、もうちょっとお金かけてみない?あと、もうちょっとオシャレして、メイクもしたりして」
3つも年下のくせに、中学生のくせに、口を出してくる。
メイクなんて男がやるもんじゃねぇだろと俺は思ったけど、メンバーが乗り気になりやがった。
そしてビジュアルバンド、Dualがつくられていくこととなる。
ファンなんていなかったのに、千夏が広めまくってくれて。
お陰で赤字だったライブ費用はプラス。
ビラも白黒コピーの手書きから、そういうものを専門に作っている会社に頼んで、なんか本格的。
人脈も増えて、自分でメイクしなくてもメイクしたいと言ってくれる仲間も増えた。
千夏がファンになってくれてからバンドは上々。
俺は女にモテまくった。
自慢じゃないが、そこまでモテたこともなかったのに、俺のまわりには常に女がいた。
「ハルー、このあと二人で帰ろう?」
メイクスタッフになったその女は2つ年上の専門学生で。
俺はそいつとつきあっていた。
「おう。じゃ、さっさと片付けようぜ」
と、俺はこのあとのお楽しみを考えて動き出す。
そんな俺を千夏は膨れて見ていた。
その頭に手を乗せる。
「差し入れのシュークリーム食うか?今日中にお召し上がりくださいってやつだろうし、おまえ食えよ」
俺に宛てられたもの。
他の差し入れも持ち帰るのも面倒だし、だいたい千夏にくれてやっている。
「……ハルちゃんって年上の美人が好みなんだ?」
「なに?妬いてるのか?……おまえもスタッフやれば?スタッフじゃなくても、おまえ、普通に楽屋入ってくるけど。パス持ってないのに顔パスしてやがるよな」
「スタッフになったらハルちゃんの彼女になれる?あたし、ハルちゃんの彼女になりたくてがんばってるんだよ?」
「中学生のくせに」
恥ずかしいくらいのまっすぐな告白してくれるから、その頭を軽く叩いて逃げた。
千夏はずっと俺に告白しまくってくれていた。
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