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「ねぇ、ハルちゃん。ハルちゃんの夢ってなに?メジャーデビュー?協力するよ」
ずっとずっと俺に献身的。
「あたしの夢?ハルちゃんのバンド、Dualのメジャーデビュー」
うれしそうに笑って俺に尽くす。
俺はずっとずっと千夏を裏切り続けているのに。
メジャーデビューという夢は本当に叶った。
これもやっぱり千夏がいなければ無理だったと思う。
千夏に世話になりっぱなしのバンドだ。
デビューしたって千夏はメンバー。
練習スタジオに呼ぶと、俺の作った曲をこれでもかってくらいに編曲しやがる。
そしてその歌が売れる。
チャートではまだまだ下位でも、あまりおいている店がなくても、普通に一般発売されている。
何か千夏にご褒美をやらないとと思って、俺はたぶん初めて女にプレゼントを買った。
彼女というものがきれたことないくらい、別れてつきあってを繰り返しているけど、女に自分で選んだものなんてあげたこともなかった。
貢がれてばかり。
何がいいのかまったくわからなかった。
ただ、俺宛にファンから贈られたプレゼントがあって、その中にあったくまのぬいぐるみをかわいいかわいいと言いまくっていたのを思い出して。
どうせならと3万もするでかいくまのぬいぐるみを買ってやった。
あげるまではこれでいいのかと悩んで。
あげたあとにくれた千夏の本当にうれしそうな顔に俺が喜んだ。
裏切っていても。
大切な女だった。
受け取らないままでいても、手放すつもりもなかった。
一人暮らしをすると千夏が家にきたがって、何度か家に入れているうちに、くる前には俺に連絡してくるし、別にいいかと合鍵をくれてやった。
俺の留守中に部屋の掃除しておいてと。
千夏は本当にやってくれて、俺がいない間に飯も飲み物も補充しておいてくれて。
まったくもって迷惑とは思わなかった。
女はだけどその家に連れて帰ることはなかった。
いつか見られた女といちゃついた姿。
それを見た千夏の顔を思い出すとできなかった。
今度こそ嫌われそうで。
いなくなりそうで。
俺なりに千夏に気を遣った女とのつきあい方。
千夏はまだそこにいた。
俺のそばで俺を追いかけて俺に献身的に尽くしていた。
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