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トラスはそれを慰め、想いを打ち明け、生涯支えることを約束した。その真摯な態度に、メイヤも素直に受け入れてくれたのだ。
「てか、兄さんって…」
「何だ?」
「何で、今まで結婚してなかったんだろう?」
「何でって、必要が無かったからな」
「うん、まぁ、寿命長いから、いつでも出来るってのは解るんだけど…」
「何が言いたい、はっきり言え」
「意外に女性の扱いが巧かったんだなぁ、と」
「おい…」
ラシルと違い、闇の館で多人数で暮らしてきたトラスは、人との付き合いに長けていた。男女問わず付き合い方を心得ている。
それは長として必要な資質でもあったが、ラシルにはまだまだな部分でもあった。
ただ、まさか、こういう場面できっちり決められるとは思わなかったラシルは、悩んだ分トラスをからかっていた。
「人生経験の違いだな」
「はいはい…俺の倍だもんね。考えてみたら、結構な年の差だよね」
「まぁな」
魔法使いであるが故の年齢差だった。
普通の民なら、兄弟というより親子だった。
「てことは、俺が長を継ぐまで、そのぐらいの期間が必要ってこと?」
「さぁ、お前次第だろ?」
「う……」
「お前なら、私より成長が早いから、そのうち追い付くさ」
と、トラスはラシルの肩を叩いた。
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