1007人が本棚に入れています
本棚に追加
/356ページ
「お前は、生まれながらの光の長なんだな。私も覚悟を決めるべきかもしれないな」
「何の覚悟?」
「闇の長になる覚悟だ」
まさか、トラスからそんな言葉が出るとは思っていなかった。
「もう覚悟は決まってるもんだと…」
「まぁな。後を継ぐことに躊躇いはないが、今までは父さんが戻ってくるのを待ってたところがあったからな」
「そうなんだ」
「今の長だって、父さんが戻ってくれば座を返すつもりで、中継ぎをしてくださってたんだ。だが、父さんは死んでいたし、もう二度と会うことも無いだろうしな」
「え、だって守護者なんだから、その気になれば会えるはず」
ラシルは意識を取り戻した後で、すぐに深い眠りについたために、その後のことを知らなかった。
「ラシル、父さんはもう居ない」
「え…?」
「父さんはお前を助けるために、闇の妖精と同化した。だから、あの後、識格は消滅することになっていた…」
「そんな…」
ラシルは呆然となった。
「…なんで…そこまで」
「父親だからな」
「…だからって…俺のために…」
ラシルの目から涙が零れ落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!