閑話休題(1)

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一人立ちの儀式には、見習いも参列を許される。将来の励みとするために、先輩の儀式を見ることが推奨されているからだ。 闇魔法使いは、黒を基本にしたローブを纏うのだが、その人は違っていた。 黒を基本に、フードと袖口に白い幅広の折り返しが付いていた。 そして、長や賢者たちは銀糸の刺繍が入っているのに対して、金糸で刺繍が施されていた。明らかに、光魔法使いを意識して仕立てられたと判った。 その時初めて、杖を持つ姿も目にした。儀式が始まる寸前に、胸元に左手の拳をあて、スッと引くと杖が現れたのだ。後から思い返すと、丸い透明な珠をいつも胸元に下げていた。 一人立ちの儀式が済むと、館の住人に対して、彼に関する布告が出された。 『次期光の長を継ぐ者として、長の次位であることを宣する』 つまり、トラス様と同じように賢者の上に立たれたのだ。 しかし本人の態度は変わらず、上下の区別など一切なく、誰とでも気さくに接していた。
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